無雙直傳英信流居合術
無雙直傳英信流居合術
精修会の系譜
流祖・林崎甚助源重信-二代田宮平兵衛業正-三代長野無楽入道槿露斎-
四代百々軍兵衛尉光重-五代蟻川正左衛門宗続 -六代万野団右衛門信定-
七代長谷川主税助英信-八代荒井勢哲清信-九代林六太夫守政-
十代林安太夫政詡-十一代大黒元右衛門清勝-十二代林益之丞政誠-
十三代依田万蔵敬勝-十四代林弥太夫政敬-十五代谷村亀之丞自雄-
十六代五藤孫兵衛正亮-十七代大江正路子敬-十八代山内豊健-
十九代河野兼光-二十代尾上政美 -二十一代 加藤和正-
二十二代 尾上政人
明武館道場について
第十九代河野兼光先生 は高知に生まれ英信流等学び、東京の地に移り、東京都豊島区に明武館を設立した。
明武館は東京で数少ない戦前から英信流居合や剣道等を教える道場であった。
第十八代山内豊健先生も東京の明武館にて関わりご指導等されていた。
精修会の設立について
精修会は、明武館道場において代々大切に保管・継承されてきた英信流居合術を正道に保管・継承するため、令和7年(2025年)1月に正式に設立いたしました。
なお、本会は新たに会として設立したものですが、居合術の技術・精神については、古来より継承されてきた十七代 大江正路先生、十八代 山内豊健先生、十九代 河野兼光先生、二十代 尾上政美先生の教えに基づき守り伝えております。
当道場設立に際しましては、二十代 尾上政美先生のご関係者様、およびご令室・尾上良子先生より「明武館道場にて大切に受け継がれてきた居合術を、後世にしっかりと伝えていってほしい」との強い思いを託されました。また、尾上政美先生の直門であり、全傳を継承された二十一代 加藤和正先生のご意向も、大きな励みとなりました。こうしたご縁と信念のもと、古武道としての英信流居合術を次代へ継承・保存していくため、精修会を設立した次第です。
明武館道場は、十八代 山内豊健先生が関わられ、十九代 河野兼光先生、二十代 尾上政美先生へと居合の技と心が受け継がれてきた歴史ある道場です。伊藤先生、小田島先生、加藤先生をはじめ、多くの先生方が関わり、明武館道場での居合を深く尊重し、育んでこられました。
精修会では、こうした明武館道場に深く関わられた諸先生方、ご関係者の皆様のご指導・ご助力をいただきながら、代々の教えを大切に継承しております。
会としての設立は新しいものではありますが、居合術においては、十七代 大江正路先生、十八代 山内豊健先生、十九代 河野兼光先生、二十代 尾上政美先生、そして二十一代 加藤和正先生へと脈々と受け継がれてきたものであり、その正統を守りながら保管・継承・研究に努めております。
また、当道場では、継承巻伝・印・解明書等も正式に継承しており、確かな系譜とともに居合術を伝承しております。
【明武館道場設立の由来と「精修」の理念について】
明武館に伝わる歴史を学ばせていただく中で、「精修」とは、河野兼光先生が武術修養の理念として大切にされ、また明武館道場設立の根幹ともなった名称であると当道場に伝えられております。 実際に、「精修」の語は明武館に関する記録や資料にも残されております。 「精修」とは、「精しく修める」、すなわち物事を丁寧かつ精密に修めるという意味を持ち、学理を深く究め、技芸を精密に研鑽し、伝統を真摯に修めてゆくという理念を表すものとされております。 また明武館では、この「精修」の理念のもと、「正しき技術を復習練磨精進するとともに、居合道の正道を志す」と伝えられております。 明武館道場は、単に道場という形のみを目的として成立したものではなく、河野兼光先生が武術修養を通じた「精修」の志、その理念を貫くための場として築かれたものと伝えられております。 すなわち、「道場のために志が生まれるのではなく、精修を貫くために場がある」という考え方でございます。 そして、その「精修」は明武館の根幹であり、さらに明武館には「累代先師遺教」をはじめとする様々な言葉や教えが伝えられております。 それぞれの言葉は、一見すると異なる意味を持つようにも見受けられますが、その根底には「精修」という理念が根幹にあり、「精修」を学び、深めることで点と点が結ばれてゆくものと考え伝えられております。 未熟な私ではございますが、こうした歴史や傳承を当道場に関わる先生方、先師のご関係者様などから学ばせていただけることに深く感謝し、今後も真摯に研鑽を重ねて参りたいと存じます。
【 山内豊健先生より政美へ伝えられたご指導 】
※今回、当道場における理解の一端として、また皆様にとって一つの研究資料となればとの思いより、差し支えのない範囲に限り、記載させて頂きました。
なお、本稿に記した内容は、全体のすべてを述べたものではなく、その一部に過ぎませんことを、何卒ご理解賜れれば幸いに存じます。※
山内豊健先生が、政美へ直接ご指導くださったお話のひとつとして、当道場に伝えられている大切な心得がございます。 山内先生は政美に対し、「初傳、中傳、奥伝(正坐之部・立膝之部・奥居合)を、しっかり稽古するように。(繰り返し、繰り返し。)」と、ご指導くださったとのことです。 政美は生前、山内先生のご指導に関しては「有難いご指導を賜った」と、折に触れて語られていたそうです。 武道においては、「極意とは別にどこか遠くに存在するものではないか」と考え、特別な秘術や変化を求めてしまいがちでございます。当道場に伝わる山内先生のご指導のひとつに初傳・中傳・奥伝を、ただ真摯に、繰り返し、繰り返し磨き続けることであります。 その積み重ねの内にこそ、自然と道理や原則が現れ、やがて身に備わってゆくのではないかと思われます。 河野兼光から政美へ、そして当道場へ受け継がれてきた「精修」の精神に関わるものであると思われます。 そして、この教えは、かつての明武館の根本姿勢そのものであると考えます。
政美は「ここの道場(明武館)は、山内先生よりご指導頂いた英信流を学ぶ道場である。自分たちの名のために居合を抜くのではない。教わった居合を、山内先生に見て頂くため、届けるために刀を抜くのである。」 この言葉の伝えには、古き武道における「報恩」の心が残されていおります。 己が名声のためではなく、先師より授かった業を曇らせぬために刀を抜く。 教えられた形を、誠実に磨き続け、その居合を以て先師へ応える。 その姿勢の積み重ねこそが、明武館の気風を支えてきたのであろうと思われます。 伝えられた業を深く修め、 己を誇るのではなく、先師へ恥じぬよう稽古を重ねる。 その謙虚にして厳粛なる歩みの中にこそ、明武館が大切にしてきた居合道の精神が、深く刻まれていたと思われます。
加藤和正先生について
二十代 尾上政美先生より全傳を継承された加藤和正先生は、学生時代より剣道・居合道などをはじめとする武道の修行に励まれ、小田島健先生など多くの先生方と共に晩年の尾上政美先生を支えてこられました。
明武館道場において尾上政美先生より全傳を継承された後も、「この居合を大切に伝えていってほしい」とのご指導を受け、真摯にその教えを守り続けておられました。
加藤先生の技のご指導は非常に厳格で、「速さでごまかしてはならない。速く行うこと自体が悪いのではない。迅速であると同時に、丁寧に行うことが大切である」と、幾度もご指導をいただきました。
これは、「本来必要な動作を省略せず、略すことなく、すべての工程を正確に行ったうえで、速さを備えることが重要である」という意味であり、居合における本質を体現する教えとして大切に受け継がれております。
加藤先生は継承後、どこにも付属することなく、十七代 大江正路先生、十八代 山内豊健先生、十九代 河野兼光先生、二十代 尾上政美先生からの居合術を、非常に大切にし、守ってこられました。
先生方のお写真
加藤和正先生は、長年にわたり明武館道場にて尾上政美先生を支えてこられた、道場の支柱とも言える存在でした。
全継承巻伝・印・解明書を受け継がれ、その技法と教えを忠実に守り伝えることに、使命感を抱いておられました。
尾上政美先生との関係も深く、稽古後には互いの研鑽と探求心を持ち寄り、居合の本質や刀の作法、歴史的背景などについて夜遅くまで語り合っておられたと伺いました。
そうした語らいは、技術論にとどまらず、武道を通じた人としての在り方、心のありようにまで及び、お二人の間には信頼と敬意に満ちた、師弟・同志の絆が築かれ多くのものが継承されました。
左上:加藤和正先生
右下:尾上政美先生
撮影者:小田島 健先生
稽古で使用する刀の長さ
稽古で使用する刀の長さについて。
当道場は定寸の刀の稽古を修め(定寸を稽古し身につけ)さらに刀身の長い刀(定寸以上)の技術を学びます。
本件については明武館道場からの流れを継続しております。
<明武館道場と長刀(刀身の長い刀)について>
明武館道場ではなぜ長刀(刀身の長い刀※以下長刀と表現する)を使用し稽古をしていたのか。
明武館道場では居合を行うにあたり刀身の長さの規定が存在し、※2尺3寸〜2尺5寸とされていた。(※時代の流れで体格など個人差があるものは身に合いたるものを使用することが適切とされ、のちに2尺3寸~2尺5寸など刀身の長さについて明確な規定はなくし、刀の長さ・重さについては身に合っものを使用することとした。(刃長2尺5寸2分5厘の刀を使用していた記録も残されている。))
明武館道場にて河野兼光先生は定寸の刀技術を修めつつ(身につける)も刀身の長い刀も使用し、稽古されていた。
河野兼光先生が扱われていた刀は2尺5寸以上あったとのこと。
尾上政美先生も同様に定寸の刀を修めつつも刀身の長い刀もご使用されていた。
明武館道場では長い刀を扱う場合には刃長の定義は特に設けていなかった。
明武館の居合は刀の定寸技術を修め(定寸を稽古し身につけ)、長刀を理解することとして、定寸を修めた後、長刀の稽古も可能であった。
明武館道場の長刀の伝えは「長しも短に事也我朧し」であった。
親指について(当流の特徴)
精修会では、先師の教えに従い、拳を握る際には親指を掌の中に収めて握ります。
この所作は山内先生より伝えられたものであり、また河野兼光先生におかれても、写真撮影の折などに親指を掌の内へ入れておられる姿が見受けられます。
袴払い(当流の特徴)
精修会における袴払いは、山内先生より伝えられ先師の教えに則り、右足を円を描くように廻して行います。
その所作は、一筆書きのように滑らかで優雅であることを旨としています。
また、明武館道場においては、立膝の稽古に入る前に、袴払いのみを独立して行う稽古もなされていたと伝えられています。
※尾上政美先生の画像。
先代の加藤和正先生、小田島先生が撮影されました。
明武館道場に伝えられた技術が後世にも伝えられるように記録されたとのことです。
当道場のYouTubeにも動画掲載しております。
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動画の冒頭の長物について
冒頭、長物を使用した技術がございますが、これは明武館道場に伝わる「長しも短に事也我朧し(我長物は短く扱、長さ悟られず霞に扱う)」の言葉をイメージした技術です。
業ではなく、あくまで身体を十分に伸ばす稽古です。
当道場伝承之語
「英信流の伝承と武道研究場」
議論が深まる中で、河野兼光師範は「累代先師の教えを大切にし、二心なく一心にあるべし」との趣旨を語られたと伝えられております。
本内容の詳細は、Instagramにて「明武館における『英信流』と『武道研究場』」として掲載しておりますので、よろしければご覧ください。
巻伝について
明武館道場には、門外不出とされてきた巻伝が存在しております。
全継承巻伝をはじめ、印・解明書など、さらには最奥伝に至るまで、貴重な伝承文書の数々は、守り伝えられてまいりました。
これらはすべて、明武館道場を受け継ぐ精修会にのみ託され、継承が許されております。
また、尾上政美師範より全傳継承を受けた道場は、現在において当道場のみとなります。
しかしながら、明武館道場が考える継承とは、単に巻伝や印可等の文書類を受け継ぐことだけを意味するものではありません。
明武館道場では、累代先師より受け継がれてきた教え、すなわち「累代先師遺教也」を極めて重要な継承要素としております。
ここでいう累代先師遺教也とは、文書上の教えのみを指すのではなく、歴代先師より実際に伝授され、教授され続けてきた技術そのものを意味します。
したがって明武館道場における継承とは、
上記らが相互に一致し、総合的に受け継がれていることに大きな意味があります。
文書のみでもなく、技術のみでもありません。
伝承文書等と累代先師遺教也、そして実際の技術伝承が一体となって初めて、明武館道場における継承が成立するとなります。
(精修会に伝わる下記 明武館徽章の装飾品 、継承巻伝・印・解明書・等 史料は登録対応済みのため許諾なく使用されることは控えて頂けますと幸いです。)
精修会は、政美師範より加藤師範を経て、尾上政人に継承されてきた系譜に基づく道場です。
当該系譜においては、技法のみならず、理念・作法・精神性を含め大切に守り伝えられてきました。
※写真はあくまで公開可能なものの一部を公開しております。
明武館徽章
当道場には、代々の師範が守り伝えてきた貴重なる継承品がございます。
その中でも、画像の「明武館徽章」は、当流の正統を受け継ぐ者のみに授けられる、門外不出の明武館の装飾品にございます。
この装飾品は、単なる銀製の装飾品にあらず、道統の象徴として託されるものです。
刻まれた「明武館」の三文字は、歴代師範の精神と誇りを映し出し、これを手にする者に深甚なる覚悟と責任を問いかけると伝えられております。
徽章の授与は、単なる物の受け渡しではなく、師範の魂を継ぎ、流派の未来を担う使命の受け渡しとされます。
代々の師範が守り抜いてきた道の清浄性を象徴するこの徽章を胸に掛けるとき、継承者はその重さを心に刻み、自らの未熟を戒めつつ、流派の真理に更なる精進を誓わねばならぬとされます。
今日に至るまで、この徽章が一つとして失われることなく守られてきたのは、ひとえに歴代師範の矜持と、 門弟の敬虔なる心の賜物にほかなりません。
当道場は、これから先もこの伝統を微塵も穢すことなく、さらに後世へと真摯に伝承していく所存にございます。
精修会 代表挨拶
精修会は、令和七年一月、明武館道場において代々厳として守り伝えられてきた居合術を後世に伝承すべく、ここに設立いたしました。
当道場設立に際しましては、二十代 尾上政美先生のご関係者並びにご令室・尾上良子先生より、「明武館道場にて大切に育まれてきた居合術を、後世にしっかりと伝えていってほしい」との深いご期待と熱いご信念を賜りました。また、二十一代 加藤和正先生よりは、全傳継承者としてのご高配と貴重なるご助言を頂戴するとともに、明武館の居合に対する小田島健先生の思いも大切にし、そのお心を道場の根幹に据えてまいりました。 二十一代 加藤和正先生、小田島健先生、そして尾上良子先生の篤きご厚情と熱いご信念は、我が道場の揺るぎなき支柱でございます。
英信流居合術は、十七代 大江正路先生、十八代 山内豊健先生、十九代 河野兼光先生、二十代 尾上政美先生、そして二十一代 加藤和正先生へと、師から弟子へ、代々命脈を保ちながら脈々と伝えられてきた古武道であります。当道場は、この貴き系譜に連なる一門として、古来の技と心を損なうことなく、厳正にこれを守り伝えることを第一の務めといたします。
さらに、明武館道場において伝えられてきた継承巻伝・印・解明書等、大切なる伝承も、確かに継承しております。
これらの遺訓を拠り所とし、居合術を後世に護り伝えるため、微力ながらも研鑽を重ね、道を求め続けてまいる所存です。
末筆ながら、ここに至るまでご指導・ご支援を賜りました諸先生方、ご関係の皆様に謹んで感謝申し上げますとともに、今後とも変わらぬご高導をお願い申し上げます。
精修会
代表 尾上 政人